はじめに
健康診断や血液検査で、「アミラーゼの値が少し高いですね」と言われて、ドキッとしたことはありませんか?
数値だけ見ても、何がどう悪いのか分からず、不安になりますよね。
アミラーゼとは、私たちの体の中で「食べ物の消化」を助けてくれる大切な酵素のひとつ。
主に膵臓(すいぞう)や唾液腺(だえきせん)から分泌され、食べ物に含まれるデンプンを分解してエネルギーに変える働きをしています。
そのアミラーゼが高いというのは、膵臓や唾液腺が少しお疲れ気味だったり、生活習慣が影響していることもあります。
もちろん、病気が隠れている場合もあるため、放っておかないことが大切です。
この記事では、アミラーゼが高くなる原因や考えられる病気、そして日常生活でできる対処法・予防法までを、わかりやすくご紹介します。
「数値が高い=すぐに危険」ではないことを知り、正しい知識で体を守っていきましょう。
🧬アミラーゼとは?どんな働きをする酵素?
アミラーゼとは、私たちの体の中で「食べ物を分解して消化を助ける酵素(こうそ)」の一つです。
特に、ごはんやパン、いも類などに多く含まれる“でんぷん”を分解して、エネルギー源である「糖」に変える大切な役割を持っています。
アミラーゼには主に2つのタイプがあります。
- 唾液アミラーゼ(だえきアミラーゼ) … 口の中で働く酵素で、食べた瞬間から消化を始めます。
例えば、よくかむとごはんが甘く感じるのは、唾液アミラーゼの働きによってでんぷんが糖に変わるからです。 - 膵アミラーゼ(すいアミラーゼ) … 膵臓から分泌され、小腸でさらに細かく食べ物を分解します。
消化の後半を担い、栄養が体に吸収されやすい形にしてくれるのです。
血液検査では、このアミラーゼの量(主に膵臓や唾液腺から出て血液中に流れた分)を測定しています。
そのため、アミラーゼの数値が高いときは、「膵臓」や「唾液腺」に何らかの負担がかかっている可能性があるのです。
ただし、アミラーゼの数値は一時的に上がることもあります。
たとえば、強いストレスや脱水、疲れ、アルコールの摂りすぎなどでも変動することがあります。
ですから、まずは「どんな原因があるのか」を冷静に見ていくことが大切です。
⚖️アミラーゼが高いとは?正常値と異常値の目安
血液検査で測定されるアミラーゼの数値は、体の中でどのくらい酵素が血液中に出ているかを示しています。
多すぎても少なすぎても体の不調を知らせるサインになることがあります。
一般的なアミラーゼの基準値はおおよそ 60〜120 IU/L とされています。
ただし、検査を行う病院や検査機関によって多少の違いがありますので、あくまで目安と考えましょう。
- 基準値内(60〜120 IU/L):問題なし。正常範囲。
- やや高め(130〜200 IU/L前後):軽い負担や一時的な上昇の可能性。
- 高値(200 IU/L以上):膵臓や唾液腺の病気が関係している可能性も。
アミラーゼが高いと聞くと、「何か大きな病気では?」と不安になるかもしれません。
ですが、必ずしも深刻な病気とは限りません。
実際、ストレス・脱水・過労・アルコールなどが原因で、一時的に上昇するケースも多くあります。
大切なのは、**「数値だけで判断しないこと」**です。
もし再検査や他の検査(リパーゼ、エコーなど)をすすめられたら、
その背景を知るチャンスだと思って、きちんと受けるようにしましょう。
🩸アミラーゼが高くなる主な原因
アミラーゼが高くなる理由はいくつかあります。
大きく分けると、「膵臓(すいぞう)」「唾液腺(だえきせん)」「腎臓(じんぞう)」、そして「生活習慣やストレス」に関係していることが多いです。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
🩺① 膵臓の異常(急性膵炎・慢性膵炎・膵がんなど)
アミラーゼが高いときにまず疑われやすいのが膵臓のトラブルです。
膵臓は、食べ物を消化する酵素をつくり、血糖を調整するホルモン(インスリン)も分泌する重要な臓器。
膵炎(すいえん)が起こると、膵臓の中で酵素が過剰に働いてしまい、自分自身を傷つけてしまうことがあります。
その結果、アミラーゼが血液中に多く漏れ出し、数値が上昇します。
🔹 主な症状
- みぞおちや背中の強い痛み
- 吐き気、嘔吐
- 発熱、食欲不振
強い痛みを伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
😣② 唾液腺の異常(耳下腺炎・おたふく風邪など)
アミラーゼは唾液にも含まれているため、**唾液腺(だえきせん)**の炎症でも数値が高くなります。
代表的なのが「耳下腺炎(じかせんえん)」や「おたふく風邪(流行性耳下腺炎)」です。
この場合は、唾液アミラーゼが増えており、
ほほの腫れや痛み、発熱などがみられることが特徴です。
🔹 主な症状
- 片側または両側の頬の腫れ
- 食事時の痛み
- 発熱やだるさ
子どもだけでなく、大人でもかかることがあるため注意が必要です。
💧③ 腎機能の低下
腎臓は、体の老廃物を尿として外に出す働きをしています。
アミラーゼも腎臓を通じて体外へ排泄されるため、腎臓の働きが弱くなると血液中のアミラーゼが増えてしまうことがあります。
慢性腎臓病(CKD)や糖尿病による腎障害などがある場合、
血中のアミラーゼが少し高めに出ることがあります。
😵④ ストレス・脱水・アルコールなど生活習慣の影響
実は、病気ではなく生活の中のちょっとした要因でも、アミラーゼが一時的に高くなることがあります。
たとえば、
- 強いストレス
- 睡眠不足
- 脱水(汗や飲水不足)
- アルコールの飲みすぎ
などが原因です。
これらは体が一時的に負担を感じているサイン。
しっかり休息をとり、水分を補給し、バランスの取れた食事を心がけることで、多くは自然に戻ります。
🌿まとめ
アミラーゼが高いといっても、その原因はさまざまです。
数値だけで判断せず、症状や生活状況を合わせて見ることが大切です。
気になる症状がある場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。
🧠アミラーゼが高いときに疑われる病気
アミラーゼの数値が高いときは、体のどこかに炎症や負担が起きているサインかもしれません。
特に、膵臓(すいぞう)や唾液腺(だえきせん)に関係する病気が多いですが、
腎臓や消化器など、他の臓器が関わることもあります。
ここでは代表的な病気を紹介します。
🩺① 急性膵炎(きゅうせいすいえん)
膵臓に突然炎症が起こる病気で、アミラーゼが急激に高くなる代表的な原因です。
お酒の飲みすぎや脂っこい食事、胆石(たんせき)が関係することが多いです。
🔹主な症状
- みぞおちや背中の強い痛み
- 吐き気や嘔吐
- 発熱、腹部の張り
重症化すると命に関わることもあるため、強い痛みを感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。
💧② 慢性膵炎(まんせいすいえん)
膵臓の炎症が長期間続く病気です。
初期は軽い痛みや消化不良などで気づかれにくく、進行すると膵臓の働きが低下します。
🔹主な症状
- 繰り返す腹痛
- 下痢や脂っぽい便(脂肪便)
- 体重減少
お酒をよく飲む人や、長年にわたって膵臓に負担をかけている人に多く見られます。
😣③ 膵がん(すいがん)
膵臓のがんでもアミラーゼが高くなることがあります。
初期症状が少なく、見つかりにくい病気の一つです。
🔹主なサイン
- みぞおちや背中の違和感
- 食欲不振や体重減少
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
アミラーゼだけでは判断できませんが、
異常値が続く場合は、超音波検査やCTなどで確認することが大切です。
😷④ 耳下腺炎(おたふく風邪など)
唾液アミラーゼが上がる原因のひとつで、耳の下にある耳下腺が腫れて炎症を起こします。
子どもに多いですが、大人がかかると重くなることもあります。
🔹主な症状
- 頬やあごの下が腫れる
- かむと痛い
- 発熱やだるさ
感染症が原因のこともあるため、安静と十分な水分補給が必要です。
🩸⑤ 腎臓の病気(慢性腎臓病・腎不全など)
腎臓の働きが弱まると、アミラーゼが体の外に出にくくなり、
結果的に血液中の数値が高くなることがあります。
🔹主なサイン
- むくみや疲れやすさ
- 尿の量や色の変化
- 検査でクレアチニンや尿素窒素の上昇
🍽⑥ 消化器のトラブル(胃潰瘍・腸閉塞など)
膵臓や腎臓以外でも、胃や腸の病気でアミラーゼが高くなることがあります。
胃や腸の炎症、閉塞(つまり)などがあると、体の消化機能全体に負担がかかるためです。
🌿⑦ ストレスや疲労による一時的な上昇
検査結果を見て「病気かも」と思う前に、
最近の生活を振り返ってみましょう。
睡眠不足、ストレス、脱水、暴飲暴食など、日常の要因で一時的に上がることもあります。
💬まとめ
アミラーゼの上昇には、膵臓や唾液腺の病気だけでなく、
腎臓や消化器の不調、生活習慣までさまざまな原因があります。
数値の高さだけで自己判断せず、症状や体調の変化を医師に伝えることが何より大切です。
🔍どんな検査・診断が行われるのか
アミラーゼの数値が高いとき、医師は原因を特定するためにいくつかの検査を行います。
「どこでアミラーゼが作られ、なぜ血液中に増えたのか」を調べることで、
膵臓や唾液腺、腎臓など、どの臓器に問題があるのかを確認していきます。
💉① 血液検査
まず基本となるのが血液検査です。
アミラーゼのほかに、次のような項目を調べることで、原因を絞り込んでいきます。
- リパーゼ(膵酵素):膵臓に特有の酵素で、膵炎の診断に役立ちます。
- 肝機能(AST・ALT・γ-GTPなど):アルコールや脂肪肝との関係を確認。
- 腎機能(クレアチニン・尿素窒素):腎臓の働きが弱っていないかを確認。
アミラーゼだけが高いのか、他の値も上がっているのかで、
体のどの部分に負担があるかが見えてきます。
🚻② 尿検査
血液中のアミラーゼが腎臓を通って排出されることから、尿中のアミラーゼもチェックします。
もし尿中アミラーゼが高い場合は、膵臓からの分泌が増えている可能性が高いと考えられます。
逆に、血液では高いのに尿では低い場合は、
腎臓がアミラーゼをうまく排泄できていないサインのこともあります。
🖥③ 画像検査(CT・エコー・MRIなど)
数値だけでは分からない膵臓や唾液腺の状態を確認するために、画像検査を行うこともあります。
- 腹部エコー(超音波検査):膵臓や肝臓、胆のうの状態を確認。
- CT検査:炎症や腫れ、腫瘍などをより詳しく調べられます。
- MRI検査:膵管や胆管など、細かい構造の異常を確認可能。
痛みや放射線が気になる方もいるかもしれませんが、必要に応じて安全に行われます。
🩺④ 診察と問診
検査結果とあわせて、医師は生活習慣や症状の聞き取りを行います。
たとえば、
- 「お酒をよく飲むか」
- 「最近ストレスが多いか」
- 「食欲や体重の変化はあるか」
- 「腹痛や発熱があるか」
といった質問を通して、数値だけでなく“体のサイン”を総合的に判断します。
💬まとめ
アミラーゼの上昇にはいろいろな背景があるため、**検査は「原因を見つけるための道しるべ」**です。
自己判断せず、必要な検査をしっかり受けることで、早期発見や早めの対処につながります。
🌿アミラーゼが高いときの対処法・生活習慣改善
アミラーゼの数値が高いといっても、必ずしもすぐに病気というわけではありません。
一時的な疲れや生活習慣の乱れが原因の場合もあります。
ここでは、日常の中でできる対処法と、膵臓や体にやさしい生活の工夫をご紹介します。
💧① 水分をしっかりとる
脱水はアミラーゼの数値を上げる大きな原因のひとつです。
水分が足りないと、体内の酵素バランスが崩れ、膵臓や腎臓に負担がかかります。
🔹対処ポイント
- こまめに水や麦茶を飲む(1日1.5〜2ℓを目安に)
- コーヒー・アルコール・清涼飲料水ばかりに偏らない
- 発熱や下痢のときは特に意識して補給する
🍽② 消化にやさしい食事を心がける
膵臓は「消化の司令塔」。
脂っこい食事や暴飲暴食をすると、アミラーゼをはじめとした消化酵素を多く分泌しなければならず、負担がかかります。
🔹おすすめの食材
- おかゆ、うどん、豆腐、野菜スープなど
- 油を控えた調理法(蒸す・煮る・茹でる)
- 発酵食品(納豆、ヨーグルト、味噌など)で腸内環境を整える
🔹控えたいもの
- 揚げ物・ラーメン・ジャンクフード
- アルコール・刺激の強い香辛料
- 食べすぎ・夜遅い食事
🚶♀️③ ストレスと疲れをためない
ストレスは自律神経のバランスを乱し、膵臓や唾液腺の働きにも影響します。
また、睡眠不足や過労もアミラーゼの一時的な上昇につながります。
🔹おすすめのリラックス法
- 軽い運動(ウォーキングやストレッチ)
- 深呼吸・瞑想・入浴でリラックス
- スマホやPCを離れて「ぼーっとする時間」をつくる
心と体のバランスを整えることで、自然と数値も落ち着くことがあります。
🚭④ アルコール・喫煙を控える
アルコールは膵臓に大きな負担を与え、膵炎の原因にもなります。
喫煙も血流を悪くし、膵臓の働きを弱めることが分かっています。
「飲みすぎた翌日に数値が高かった」という場合は、一時的な上昇の可能性も。
ただし、続くようなら禁酒・減酒を意識してみましょう。
🩺⑤ 定期的に検査を受ける
一度アミラーゼが高く出た場合でも、すぐに異常とは限りません。
しかし、数値が続くようであれば、必ず再検査を受けて原因を確認することが大切です。
🔹こんなときは医療機関へ
- 数値が長期間高い
- お腹や背中の痛みがある
- 吐き気・発熱・体重減少などが続く
早めに医師に相談することで、重症化を防ぐことができます。
🌼まとめ
アミラーゼが高いというのは、体からの「少し休ませて」というサインかもしれません。
水分・食事・休養・ストレスケアを見直すことで、多くの場合は自然に落ち着いていきます。
体の声に耳を傾け、無理をしない生活を心がけましょう。
🌞予防のためにできること
アミラーゼが高いというのは、体の中の消化器官——特に膵臓や唾液腺が少し疲れているサインでもあります。
「再び高くならないようにする」ためには、日々の生活を少しずつ整えていくことが大切です。
ここでは、膵臓を守り、体の調子を整えるための予防ポイントを紹介します。
🥦① バランスのとれた食生活を意識する
食べすぎ・飲みすぎは膵臓の負担になります。
栄養バランスのとれた食事を意識し、「腹八分目」を心がけましょう。
🔹ポイント
- 主食・主菜・副菜をそろえる
- 揚げ物よりも、蒸す・煮る・焼く調理法を選ぶ
- 野菜・きのこ・海藻をしっかり摂る
- 間食・夜食を控える
小さな積み重ねが、膵臓の健康を守ります。
🚭② アルコールとタバコを控える
アルコールは膵炎の原因になりやすく、タバコは膵臓の血流を悪くします。
「たまに飲む」「本数を減らす」だけでも膵臓の負担はぐっと減ります。
お酒を飲むときは、水や炭酸水を一緒に飲むようにすると脱水予防にもなります。
🧘♀️③ ストレスをためない・リラックスする時間をつくる
ストレスは、アミラーゼの変動に深く関係します。
仕事や人間関係で緊張が続くと、自律神経のバランスが崩れ、体にも影響が出やすくなります。
🔹おすすめの習慣
- 軽い運動(ウォーキング・ストレッチ)
- ぬるめのお風呂にゆっくり入る
- 趣味や音楽でリラックス
- 深呼吸や瞑想で心を整える
“心が整えば、体も整う”ということを意識してみましょう。
💧④ 水分補給を習慣に
特に季節の変わり目や運動時は、意外と脱水になりやすいものです。
朝起きたとき、食事中、入浴後など、こまめに水を飲む習慣をつけましょう。
🩺⑤ 定期的な健康診断で早めにチェック
年に一度の健康診断は、自分の体の“メンテナンス”のようなものです。
血液検査の数値は、症状がなくても体の変化を教えてくれます。
アミラーゼが高かった人は、次回も意識して結果を確認してみましょう。
🌿まとめ
アミラーゼの値は、体のコンディションを映す「鏡」のような存在です。
疲れや食生活の乱れ、ストレスがたまっているときほど、数値に表れやすくなります。
日々の小さな習慣を整えることで、膵臓も唾液腺も元気を取り戻します。
体の声に耳を傾けながら、「無理をしない・ためこまない・やさしく整える」生活を続けていきましょう。
🌸おわりに
「アミラーゼが高い」と聞くと、つい不安になってしまいますよね。
けれど、アミラーゼは体の中でがんばって働いている“消化のサポーター”。
その数値が高いのは、体からの「少し休ませて」というサインであることも多いのです。
膵臓や唾液腺のトラブル、ストレス、生活習慣の乱れなど、原因はさまざまですが、
早めに気づいて対処することで、多くの場合は回復していきます。
大切なのは、数値だけにとらわれず、体の声をきくこと。
水分をとる、よく噛んで食べる、休む、笑う——そんな小さなことが、体を整える第一歩です。
もしアミラーゼの数値が気になったら、無理をせず、専門医に相談してみましょう。
きっと、今のあなたの体が「健康を取り戻す準備を始めている」証拠かもしれません。


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