はじめに
健康診断で「血圧の下が高いですね」と言われたことはありませんか?
一般的には「上の血圧(収縮期血圧)」に注目が集まりがちですが、「下の血圧(拡張期血圧)」が高い状態も、実は深刻な健康リスクをはらんでいます。下の血圧が高いと、心臓が休んでいるときにも血管に強い圧力がかかっている状態が続いており、血管や臓器にじわじわとダメージを与えていきます。特に、動脈硬化や心疾患、脳卒中といった生活習慣病リスクの引き金にもなりかねません。
この記事では、下の血圧が高くなる原因や体への影響、そして今日から始められる改善策までをわかりやすくご紹介します。
「血圧の下」とは?基礎知識
血圧とは、心臓が血液を全身に送り出すときに血管にかかる圧力のことを指します。測定される血圧は、通常「上」と「下」の2つの数値で示されます。
- 上の血圧(収縮期血圧):心臓が収縮して血液を押し出すときの血圧。血管に最も強く圧力がかかる瞬間です。
- 下の血圧(拡張期血圧):心臓が拡張して血液を取り込んでいるとき、つまり心臓が「休んでいる」タイミングの血圧です。
この「下の血圧」は、血管の柔軟性や末梢血管の抵抗、体の緊張状態などに大きく影響されます。正常な下の血圧の目安は60〜79mmHgとされており、80mmHg以上になると「高め」とされ、継続的に高い場合は注意が必要です。
「下の血圧が高い」とは、心臓が休んでいる間にも血管に強い圧力がかかっており、血管が常に緊張状態にあることを意味します。これが続くと、血管や臓器への負担が増し、将来的に心臓病や脳血管疾患などにつながる可能性があります。
下の血圧が高いとどうなる?考えられる影響とリスク
「下の血圧(拡張期血圧)」が高い状態が続くと、体にじわじわと悪影響を及ぼします。心臓が休んでいる時間にも血管に圧力がかかっているため、血管や臓器が常に緊張状態にさらされ、次のようなリスクが高まります。
① 動脈硬化の進行
下の血圧が高いと、血管の内側に持続的な圧力がかかり、血管壁が傷つきやすくなります。これが**動脈硬化(血管の老化)**を進行させ、血流が悪化したり、血栓ができやすくなったりします。
② 心臓への負担増大(心肥大・心不全のリスク)
心臓は、血液を送り出すためにさらに強く働く必要があり、結果として心筋が肥大しやすくなります。長期的には心臓のポンプ機能が弱まり、心不全に至るケースも。
③ 脳卒中のリスク
血圧の下が高いと、脳の血管にも強い圧力がかかり、脳出血や脳梗塞のリスクが高まります。特に動脈硬化が進んでいる場合は、血管が破れやすくなっているため注意が必要です。
④ 腎臓へのダメージ
腎臓は非常に細い血管が集まっており、高血圧の影響を受けやすい臓器です。下の血圧が高いと腎臓の血流が悪くなり、慢性腎臓病や腎機能低下を引き起こすおそれがあります。
⑤ 若年性高血圧の可能性
特に30〜40代の比較的若い世代で下の血圧が高い場合は、「若年性高血圧」が疑われます。このタイプの高血圧は、放置すると将来の心血管系疾患リスクが高まるため、早めの対策が重要です。
◆まとめ:
下の血圧が高い状態を放っておくと、心臓・脳・腎臓といった重要な臓器に深刻なダメージを与える可能性があります。自覚症状が少ない分、見逃されやすいのが特徴ですが、健康診断などで数値を指摘されたら、生活習慣の見直しや医師への相談が必要です。
原因は?下の血圧が高くなる主な要因
「下の血圧が高い」とは、心臓が拡張して休んでいる間も、血管に強い圧力がかかっている状態です。この状態が続く原因は、日々の生活習慣や体質、ストレス、ホルモンの影響など多岐にわたります。以下に代表的な要因をご紹介します。
① 塩分の摂りすぎ
塩分を過剰に摂取すると、体内の水分が増えて血液量が増加し、血管にかかる圧力が高まります。とくに加工食品や外食中心の生活では、知らず知らずのうちに塩分過多になっていることも。
② 運動不足・肥満
日常的に体を動かさないと、血液の循環が悪くなり、血管の柔軟性が低下します。また、肥満は高血圧の大きなリスク要因。特に内臓脂肪の蓄積は、血圧を上げやすくします。
③ ストレスや緊張
ストレスがたまると交感神経が優位になり、血管が収縮して血圧が上昇します。現代人は慢性的なストレスを抱えやすいため、意識的なリラックスも重要です。
④ 睡眠不足
質の悪い睡眠や慢性的な寝不足も、ホルモンバランスを崩し、血圧調整機能を乱す原因になります。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の人は特に注意が必要です。
⑤ 喫煙・過度な飲酒
タバコは血管を一時的に収縮させ、慢性的には血管を傷つけて動脈硬化を進行させます。アルコールも一時的に血圧を下げるようで、長期的には上昇につながるケースも多く見られます。
⑥ 自律神経やホルモンの乱れ
加齢や生活リズムの乱れ、女性ホルモンの変化(更年期など)により、自律神経が乱れやすくなり、血管の拡張・収縮のバランスが崩れて血圧が上がることがあります。
◆補足:体質的な要因も
- 家族に高血圧の人が多い(遺伝)
- 若年からの体重増加や食習慣の乱れ
- 冷え性や低体温も血管収縮につながることがある
生活習慣の見直しによって改善できるケースが多いのが、「下の血圧」の特徴でもあります。
今日からできる!下の血圧を下げる生活習慣
下の血圧が高い場合、多くは生活習慣の見直しによって改善が期待できます。難しいことを一度に変える必要はなく、「できることから少しずつ」取り組むことが大切です。
① 減塩を意識した食生活
- 1日の塩分摂取量は6g未満を目標に(WHO推奨)
- 味付けは「出汁」や「香味野菜」で風味をつけて塩分控えめに
- 加工食品・インスタント食品・漬物・外食は控えめに
- 醤油や味噌は「かける」より「つける」が減塩のコツ
② 有酸素運動の習慣をつける
- ウォーキング、軽いジョギング、サイクリングなど
- 1日30分を目安に週に3〜5回
- 継続が大切。まずは10分×3回など、分割でもOK
- 運動は血流を改善し、自律神経も整える
③ 質の良い睡眠を確保する
- 毎日同じ時間に寝起きする「生活リズム」を整える
- 就寝1時間前はスマホ・TVを控え、リラックスタイムに
- 寝室の温度・湿度・照明を快適に
- 6〜7時間の睡眠を目安に
④ ストレスを溜め込まない
- 深呼吸、瞑想、ヨガなどのリラックス法を取り入れる
- 趣味や軽い運動で気分転換
- 誰かに話すだけでもストレス軽減に
- 笑うことも副交感神経を優位にし、血圧を下げる助けに
⑤ 体重管理(特に内臓脂肪)
- BMI25未満を目標に、無理のない範囲で減量を
- 内臓脂肪が多いと血圧が上がりやすくなる
- 食べすぎ・早食いを避け、腹八分目を意識
⑥ 禁煙・節酒
- タバコは血管を収縮させ、長期的に高血圧の原因に
- アルコールは「適量」でも日常的な飲酒習慣は注意
(目安:ビールなら中瓶1本、日本酒1合程度まで)
⑦ カリウムをしっかり摂る
- カリウムは余分なナトリウム(塩分)を体外に排出する働きがある
- バナナ、ほうれん草、アボカド、ひじき、里芋、納豆などがおすすめ
- ※腎臓に疾患のある方は医師に相談のうえ摂取を
◆コツは「無理なく続けること」
いきなりすべてを変えるのは大変ですが、ひとつでも意識して取り組めば、確実に変化は表れます。 下の血圧は自覚症状が乏しい分、早めの行動がカギ。生活習慣の積み重ねで、未来の健康を守りましょう。
食事・飲み物での対策例
下の血圧を下げるには、「減塩」だけでなく、血管の健康を保ち、余分なナトリウムを排出する栄養素を意識的に摂ることが大切です。以下の食材や飲み物をうまく活用しましょう。
■ 血圧を下げるのにおすすめの食材
① カリウムが豊富な食材
カリウムは、体内の余分な塩分(ナトリウム)を排出して、血圧を下げる働きがあります。
- バナナ
- アボカド
- ほうれん草、小松菜
- さつまいも、里芋
- 納豆、豆類
- ひじき、昆布などの海藻類
※腎機能に不安のある方は、医師と相談のうえ摂取してください。
② 血管を柔らかく保つ食材
- 青魚(イワシ、サバ、サンマなど):EPA・DHAが血液をサラサラに
- 大豆製品(豆腐、納豆、味噌):イソフラボンが血管の健康維持に
- 野菜・果物:ビタミンCや食物繊維が血管をサポート
- ナッツ類(無塩):ビタミンEで抗酸化作用
③ 控えたい食品(塩分・脂肪分が多いもの)
- 漬物、梅干し
- カップラーメン、インスタント食品
- ハム・ソーセージなどの加工肉
- 外食や市販の総菜(表示を見て塩分量をチェック)
■ 血圧対策におすすめの飲み物
① 麦茶
- カフェインゼロで体にやさしく、利尿作用で塩分排出も期待できる
② ルイボスティー
- 抗酸化成分を含み、血管の健康維持をサポート
- ノンカフェインでリラックス効果も
③ 杜仲茶(とちゅうちゃ)
- 血圧降下作用が報告されており、特定保健用食品にも採用されるほど注目の飲み物
④ トマトジュース(無塩)
- リコピンが血管の柔軟性を高めるとされ、毎日の1杯が効果的
- ※塩分無添加タイプを選ぶことが重要
◆ポイントまとめ
- 「塩を減らし、カリウムや抗酸化成分を増やす」のが基本
- 「自然に近い食材」「加工されていない食品」を選ぶのがコツ
- 毎日の食卓で少しずつ取り入れるのが継続のカギです
医療機関での対応も大切
下の血圧(拡張期血圧)が高い状態は、生活習慣の改善だけでコントロールできるケースが多い一方で、自己判断で放置してしまうと、将来的に重大な病気につながるリスクがあります。だからこそ、医療機関での定期的なチェックや適切な対応が欠かせません。
■ ① 定期的な血圧測定・健康診断の活用
- 40歳以上の方は、年1回以上の健康診断を受けましょう
- 血圧測定は、家庭でも毎日・同じ時間に行うのがおすすめ
- 自分の平常値を把握することで、変化に気づきやすくなります
■ ② 医師による原因の特定と診断
- 下の血圧が高い背景には、ホルモン異常や腎疾患などの病気が隠れている場合もあります
- 必要に応じて、血液検査や尿検査、心電図などの検査を行うことで、根本原因の把握が可能になります
■ ③ 薬物療法の適用が必要な場合も
- 生活習慣の見直しだけでは改善が難しい場合、医師の指導のもとで降圧薬を用いることも有効です
- 現在は副作用の少ない薬も多く、安全に血圧をコントロールできます
- 自己判断で薬の使用を止めたり減らしたりするのは危険です
■ ④ 継続的なフォローアップが重要
- 血圧は一時的に下がっても、再び上がることがあります
- 医師との定期的な相談や経過観察を続けることで、合併症の予防にもつながります
- 必要に応じて、栄養指導や運動指導を受けるのも効果的
◆まとめ
「血圧の下が高い」ことは、体からの重要なサインです。
生活習慣の見直しとあわせて、医療の力も借りながら無理なく管理していくことが、将来の健康を守る大きな一歩となります。
おわりに
血圧の下が高い」という状態は、自覚症状が少ない分、見過ごされやすい傾向があります。しかし、放置すれば動脈硬化や心疾患、脳卒中など重大な病気につながるリスクがあります。今回ご紹介したように、食生活や運動、睡眠、ストレス管理など、日々の習慣を見直すことで下の血圧は十分に改善が可能です。また、必要に応じて医療機関のサポートを受けることも大切です。
まずはできることから一歩ずつ、無理のない範囲で取り組んで、将来の健康を守りましょう。


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